音楽と書籍の決定的な違い

「音楽業界のようにはならない」――デジタル戦略に乗り出す出版業界
(ITmedia News)

 別業界の失敗を反面教師として自業界を何とかしようという動きは凄いと思いました。で、元記事内にも書かれていますが、CDと違って書籍の完全デジタルメディア化はないと思うんですよね。
 そもそも音楽というのは最初からソフトウェアでしかないです。CDにしてもレコードにしてもそれらはあくまでソフトウェアであり、CDプレーヤやレコードプレーヤ、蓄音機などのハードウェアがなければ聴くことが出来ません。それを考えるとレコードからCDへの転換とCDからMP3などのデジタルメディアへの転換はそう変わらないことのように思います。確かに物理メディアが無くなった点では大きく違いますが、CDとCDプレーヤ、MP3とデジタルオーディオプレーヤのようにソフトウェアとハードウェアが1セットという関係は変わっていません。
 対して書籍というのはそれ単体がソフトウェアでありハードウェアでもあります。そのため他のハードウェアが無くても書籍単体で読むことが出来ます。この点が音楽との大きな違いではないでしょうか。そのため書籍がデジタルメディアになると本来一つであったソフトウェアとハードウェアが別々になります。データ化される分置き場所は激減しますが、変わりにハードウェアを使用する手間が増えます。外出時などにはデータ化されている方が持ち運びには便利ですが、自宅などではパッと手にとってどこでもすぐに読める、というメリットが制限されてしまいます。
 これらのことを考えると音楽や書籍をデジタルメディア化した場合、音楽はこれまでとあまり状況が変わらないのに対し、書籍はメリットだけでなくデメリットも発生します。このあたりが「書籍は全てがデジタルメディア化されることはない」とされる理由の一つではないでしょうか。